言うことは分かるけど・・・

 
 
      私は親父の没落後、
      年少から青年期にかけて、いわゆる逆境の中を泳いできた。
      そのときはつらいと思ったり、
      家をとび出してしまおうかと思ったり、
      いやだ、いやだ、と思ったこともある。
      しかし、一つの波(つまり逆境)を乗り越えて、
      それを振り返ってみたときが、
      人生の中でいちばん愉快なときである。
      自分自身の心の中でそう思うのでなく、
      そのときこそ生命の充実というか、
      ほんとうの生きがいをかんずるのだ。
      そしてまた次の波が来たら、
      よし、今度も立派に乗り越えて見せるぞ、
      朝のこない夜はないのだから・・・・・
      と思う気が出てくるのである。
     
           〜 吉川英治 〜
 
 
 
 
言うことは分かるけど・・・